青空が広がった5月の連休のある一日、先生のお茶室で茶飯釜の茶事が催されました。
茶飯釜は、茶湯と同じ釜を用いて、懐石の「ご飯」を、茶席で炊きます。
その由来は、千利休と同時代の侘び茶人、丿貫(へちかん)が
高価な道具を一切持たず、手取り釜ひとつで、雑炊も茶も
まかなったことにあるのではないか、と伝わっています。
茶飯釜は、両面に、それぞれ「飢来飯」と「渇来茶」という文字が
鋳出してあります。
「飢来飯」は、腹が減ったら飯を食べに来てください、
「渇来茶」は、のどが渇いたら、茶を飲みに来てください、
という意味で、ご飯を炊くときと、茶を点てるとき(湯を沸かすとき)とで
釜の向きを入れ替えます。
また、ご飯の炊ける香りを味わうために、
茶飯釜の炭点前の際には、香は焚かないそうです。
「松風清心」とお軸に記されたことばがピッタリな
初夏の爽やかな風が流れる茶室で、
茶飯釜に白米を入れる美しい所作拝見し、
ご飯を炊いている炭の音や色を楽しみ、
だんだんご飯が炊けてくる美味しそうな香りを味わい、
滅多にできない貴重な経験をさせていただきました。
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皐月茶会
<本席>
床:「松風清心」 希斎
釜:茶飯
<濃茶席>
水壷: 青磁 浮牡丹
茶入: 京
仕覆: 回々織
茶盌: 青井戸脇
茶杓: 千代の友
蓋置: 唐銅 胴〆 浄雄造
建水: 木地 曲
御茶: 金輪 丸久小山園詰
菓子: まんじゅう 山田屋製
器 : 縁高
<薄茶席>
花 入: 竹 亀甲
花 :
薄茶盛: 葵 唐草
茶 盌: 志野 源九朗窯
替 : 赤膚 楽斎造
蓋 置: 京 昭阿弥造
御 茶: 和光 丸久小山園詰
菓 子: あん松露 千壽堂 和三盆